YAMATO
The Interview about Gift_vol.2
YAMATO
The Interview about Gift_vol.2
あなたにとって
贈りものってなんですか?
相手を想う、
時間の集積。
GUEST
玉置純子
さん
(stillwater Co-Founder)
GUEST
玉置純子
さん
(stillwater Co-Founder)
贈る相手の
視野が広がるものを
贈りたい
ギフトを贈るときに最も大切にしていることはどんなことですか?
まず、ギフトの定義って難しいですよね。物の時もあるし、体験の時もあってどちらもギフトだなと思います。共通しているのは、贈る相手がさらに輝くものを渡したくなるということ。輝くというのはつまり、相手のこれまでの価値観の中にはなかったプラスの視点と言いますか、貰うことで世界が広がるような。外観を彩るという意味ではなくて、その人の内側にアプローチする感覚のほうが強いです。贈りものを受け取ることで、新たな気づきが生まれたり、行動が変わったりするきっかけになるもの。
かつて、とってもパンを作るのが好きな友人に、お米の美味しさも味わって貰いたいなと思って琺瑯の炊飯釜をプレゼントしたことがありました。旦那さんの方が喜んでいましたが(笑)、パン作りにまつわる道具や器はたくさん持っているだろうなと想像して選んだ贈りものでした。
先日も海洋関係の仕事をしている仲間に、貝殻や珊瑚などの海岸に流れ着いた素材と、鉱物や植物の枝のような森の中で採取した素材を重ね合わせて作られたピアスを贈りました。海を考えるなら山から、というメッセージを込めたかった。
そんなわけで、割と私が贈りものをするときはコンセプチュアルなのかもしれないです。色々と考えた末に決めることが多い。
なるほど、贈りもので視野を広げるという発想は面白いですね。
これまでに貰って印象に残っているギフトはありますか?
普通のなんでもない日に、買い物を頼んだ家人が、ラウデミオのEXVオリーブオイルを買ってきてくれたんです。それは、私にとって最上級のオリーブオイルでした。お店のスタッフの方に一番美味しいオリーブオイルはどれですか? と尋ねたら出してきてくれたそうです。日常使いには勿体ないほどの香り高いオイルです。平日の夕方、突然私が一番好きな最高級のオリーブオイルを貰う、このギャップがなんとも粋な贈りかただなと思いました。大好きだけど、わざわざ自分のためには買わないもの。日常の中でもさりげないけど、すごく嬉しい贈りものってできるんだなと思った出来事でした。
今までで貰って驚いた贈りものはなんですか。
仕事仲間から、誕生日のお祝いにコットンでできたとても華奢で、繊細な下着を貰ったんです。私、こんなイメージ?! って(笑)。自分では絶対に選ばない物だったので、彼女にどうして選んでくれたのかを聞いたら「私も愛用していて、とても着心地がいいから」という返事が返ってきました。そうか、自分で愛用している良いものを相手が喜んでくれると思って贈ることがあるんだ! と、その時に思ったんです。
贈りものの選び方や贈り方って人それぞれで、みんなが私と同じ視点で選んでいるわけじゃない。選んでくれた相手の気持ちが伝わってくる贈りものも嬉しいですよね。
おもてなしも
贈りもの
贈りものをするということそのものに対して、特別な思い入れがあれば教えてください。
そこに至るまでにかかっている時間が長ければ長いほど、価値があると思ってしまいます。例えば、親友がくれた手作りの味噌とか、母が漬けてくれた梅干しなど。それから、ホームパーティー! 誰かに食べてもらう前提で作られたお料理ってなんだか幸せそうに見えます。お店で食べるプロが作る料理とは何かが違う。ゲストを招いて食事を振る舞うのって、緊張するけれど、ワクワクもする。家を整えて、料理を作ることは相手を思い浮かべる時間そのもので、とても楽しい。
一方、作ってくれたものをいただくのも好きです。そこに向けてその人が考えてくれた工夫とか準備、その人のセンスが垣間見えたりすると嬉しいですよね。「おもてなしもその人への贈りもの」だと思っているところもがあるかもしれません。
日常の中にある、自分の小さなこだわり。この人はこんな調味料を使うんだなとか、薬味の考え方とか、料理にはそういう生活の中の習慣が滲み出てくる。
なるほど、それこそ体験そのものがギフトですね。
ちなみに、お仕事としてキッチンツールや美容品などの商品開発もされていますが、開発の際に、お客さまにギフトとして選ばれることを意識してものづくりをすることもありますか?
これが、ないんですよね。開発しているものは日々の生活に関わるものが多いこともありますが、感覚的には「私から皆さんへのギフト」という気持ちで開発しています。最初の質問への答えと一緒で、「これを持っていたらきっと素敵だよ! ぜひ使ってみて欲しい」と思って作っています。
開発をする上で大切にしているのは、作り手の想いや、企画した人の想いがさりげない質感と共にちゃんと届くこと。手に取った人の世界が、そのプロダクトによって広がったり、視点が変わったりするもの。例えば、その器があることで朝食を食べるのが楽しみになって、生活にリズムが出てきたとか、一輪挿しがあることで花を生ける習慣ができたとか、知らない間に小さな小さな変化が起きるような。もちろん、結果的に、贈り主がそれを選んで誰かに贈りたいと思ってくれたらとても嬉しいです。誰かに贈って欲しいと思って作っているというよりは、私が皆さんに贈りたいと思って作っている感じかな。
今まさに考えている贈りものはありますか?
今、三重県にある父の生家をリノベーションしているのですが、家族の現在のライフステージに合った使い方ができるように、思いを巡らせてデザインしています。予算も時間もかかりますが、まさに原動力は「贈りもの」に近い感覚です。
両親にとっては遠く離れている生家だけど、また再びそこで過ごしてもらうにはどうしたらいいだろう? と考え、父の趣味の燻製作りができる庭や、茶道の先生である母のための茶室など、過ごす時間を想像しながら設計してきました。また、その空間に合うアート作品や写真作品を集めている最中なのですが、父と母にアートに触れて欲しいという気持ちがあるのかもしれません。なぜか心を動かされるもの、私にとってはアートや、写真、自然、映画や本。大切にしているものを、散りばめてみたい。その先にまた新しい視点や発見があったら嬉しいなと思うからでしょうね。
玉置さんにとっての
贈りものとは
玉置さんにとっての贈りものってなんでしょうか。
贈る相手が自分では買わないもの、だけどその人が潜在的に求めているであろうものを贈ること、ですかね。その人にとっては未知なるもの(笑)。でも、それを探し当てて、相手に届いた時、なんだかとっても嬉しいんです。一緒に扉を開けた感覚になれる。きっと、自分自身が多くのものからインスピレーションを受けて、自分の扉を開けてきた経験があるからかもしれません。贈りものにはそんな力があると思っています。
「贈りものは新しい自分への扉」、なのかもしれませんね。楽しいお話、ありがとうございました。
PROFILE
stillwater Co-Founder
玉置純子
Stillwater 創業メンバーの一人。インタビューや企画、編集など独自の方法を用いて対話を重ね、時に既にある価値に光を当て、時に新たな価値を生み出し、時に問題解決に導く、クリエイティブコンサルティングを生業とする。中でも、分析、企画、開発、作文、言葉とビジュアルで伝えることなどを主に担当。また、自社ブランドであるオーガニックプロダクト「The days」のほか、人間的本能の回復をテーマにしたセルフケアブランド「whole」をスタート。日々の暮らしの中で、感性と感受性をひらいていくことを大切にしていたいと、活動を続けている。
http://stillwaterworks.jp