株式会社大和

WHAT IS A GIFT TO YOU? YAMATO
The Interview about Gift_vol.4

YAMATO
The Interview about Gift_vol.4
あなたにとって
贈りものってなんですか?

ひと手間に想いをのせて 私自身を表現するもの

GUEST

真野知子さん (ギフトコンシェルジュ)

GUEST

真野知子さん (ギフトコンシェルジュ)

ギフトコンシェルジュ
という仕事

ギフトコンシェルジュ、というお仕事自体がとても珍しいと思いますが、このお仕事を始められた経緯を教えてください。

 ファッションブランドのプレスをしていた時期があって、世界的なブランドのプレスの方々や、メディアの方々にお会いする機会が多く、一筋縄ではいかない手土産の文化を、身をもって学ぶ経験をしました。私は、兵庫県の城崎温泉で知られる観光地で生まれ育ったので、お土産文化が身近だったこともあると思います。また、実家が家業をしているということも影響が大きいかもしれません。季節の行事に合わせて、決まった日に決まったものを食べる習慣や、元を担ぐ日本古来の文化も大切にしている家庭でした。季節の節目に感謝の気持ちを贈り、贈られという習慣や、お取引先、お得意先、スタッフの方々などさまざまな関係の中での物を介したお付き合いがありました。そんな贈りもの文化の中で育っていることが私の価値観を形成したのかなと思っています。
 現在は、メディアを通して贈りものを選ぶ楽しさや、選び方のヒント、選択肢の豊富さを知っていただく機会が作れれば、と思ってギフトコンシェルジュのお仕事を続けています。

素敵な贈りものには
〝ひと⼿間〟がある “ひと⼿間”がある

ものを⾒た時に、惹かれる共通点はありますか?

 今日持ってきたのは私のコレクションのほんの一部で、まだまだ沢山あります(笑)。小さな花の絵が描かれた便箋や、お福さんのシール、匂い袋が入った封筒や季節の草花があしらわれたメッセージカードなど、この季節はこれがいいかな? あの人に贈りたいなと、想いを巡らせながら選びます。実際に使うことはもちろんありますが、手に取りながら眺めて楽しむのも大好きです。贈りものを贈る時のこうしたひと手間にこそ、気持ちを乗せることができると考えています。また、贈りものって、第一印象が大切なので、つい惹かれて手が伸びるのは、箱に入った時の佇まいが美しいもの、パッケージが面白いもの、手仕事を感じる洋風のデザイン、日本の美意識を感じる包みなどです。実際、リボンやお熨斗をつけるだけで、なんでも贈りものになります。
 ギフトって定義があるようで、ない。手土産って言えば何でも手土産になる。日本には、お年賀からお歳暮まで一年通してさまざまなシーンで、贈りものには多様な幅の広さがあります。一方、持ち運べるサイズが贈りものの定義かというと、体験型のものも立派な贈りものになりますよね。

今⽇は贈られたギフトの中から、気に⼊っているものをお持ち頂きました。

 ウェッジウッドのハーレークイーンコレクションは、可愛いカップアンドソーサーです。サスティナブルであることが求められる時代ですから、箱はどんどん簡略化されていく方向だとは思いますが、収納する時も、箱から取り出す時も心が躍るような、隅々までデザインが行き渡っているものは、やっぱりいいですよね。ブルーとゴールドの組み合わせも素敵ですよね。けれど中は花柄、細工が細かいこの感じが気に入っています。仕舞い込んでしまうと勿体無いので、飾ったり使ったり、気分に合わせて楽しんでいます。
 包み紙とか箱などはなんでも取っておく時期がありましたが、置いているだけではないのと同じなので(笑)、ある程度の期間使わない場合は処分することにしています。

 サンタマリア・ノヴェッラの本の形をした箱に入っている香水は、イタリアのメディチ家専用のハーブ農園で育てられた薬草を使っているそうです。紙を丁寧に貼った箱も可愛いくて。こうして見ると、イタリアや、フランスのものが多いですね。包みにこだわったり、手書きのメッセージが添えてあるものや、手仕事が美しい箱に入っているものも多いですね。ひと手間をかけてあるものや、丁寧に作られているという点が共通点かもしれません。  香水は自分では選ばなかった香りだとしても、相手が思う私のイメージなのだと思って、使ってみます。贈りものはそういう出会いが嬉しいですよね。  余談ですが、自分が気になっているブランドや、愛用しているメーカーなどは友人には伝えることが多いです。自分が好きだと思っているものや世界観は知っていて欲しいし、贈りものをもらい上手になる秘訣かなと思います。

贈る側になった時に
⼤切にしていること

真野さんご⾃⾝が贈る場合はいかがでしょうか?

 海外の方には日本の手仕事や美意識を感じられる、工芸品やアナログなものを贈ることが多いです。手仕事には、職人さんが時間をかけてきた背景が見えます。また、日本の季節の美しさを映し取ったもの、模したものが好きです。季節ものは使う期間が限られますが、それを使う時にああこの季節が巡ってきたな、と毎年思えるのがいいですよね。

 贈りものを贈る時には、TPOを大切にしています。フォーマルなのか、カジュアルなのか。相手との距離感も大事なポイントです。目上の方なのか友人なのか、シチュエーションによって異なります。男性か女性か、その方に使っていただきたいものにするのか、家族と楽しめるものがいいのか。食べものを贈る際には、体調やご年齢によって、気をつけていることはないか、気にかけてから贈ります。初めましての方だった場合は、自分が気に入っているもの、背景まで語れるものを贈ります。そうすることで、自分自身を知ってもらう機会にもなるし、自分のもの選びを表現するような意識ですかね。そのどちらの場合でも、“季節”はさりげないけれど大きなキーワードになります。

お仕事を通してギフトの開発のお仕事もありますか?

 いろいろありますが長いお付き合いになるのは、石川県金沢市の「箔一」さんの商品開発をお手伝いしています。「ROOM SERVICE」という私のプライベートブランドで、菓子皿やティーセットなどをコラボレーションしていただいて誕生した新シリーズがあります。金箔で加飾したこのお皿は、フレンチの巨匠、アラン・デュカスさんに周年のお祝いでプレゼントしました。とても気に入ってくださってデュカスさんのレストランで、この器を採用してくださることになり、これまでの仕事のご褒美をいただいたみたいで本当に嬉しかったです! デュカスさんから、私の名前を入れたいとお話しいただき、器の裏面にTomoko Manoの名前を入れさせて頂いています。大きなサイズのお皿もご要望をいただいています。

贈りものはまるで
カードゲームの
ようなもの

それは素晴らしいですね!
真野さんがものを選んだり、商品開発をするにあたり、ご自身のインプットはどのようにされていますか?

 気になっている展示会やお店を巡ったりもしますし、自分自身がものをもらう体験から思いつく新しいギフトの発想もあります。
 元々、ギフトコンシェルジュという仕事は、米国・ハリウッドなどではメジャーな仕事で、お金はあるけれど時間がない忙しい方が利用するサービスなのだそうです。百貨店の外商がそれに近いイメージです。この仕事を勧められて始めようと考えていた当時、運よく書籍を出せたことから、自分の“ものを選ぶ”視点が仕事になるのかもしれないと、自信に変わっていきました。
 贈りものをするということは、カードゲームみたいだなと思います。いろんなものを知っていても、どのタイミングでそれを贈るのかシチュエーションによって変わります。ゲームの種類によって出すカードが決まってくるな、と。ルールを知っていれば、エンドレスに楽しめる。相手が出したカードに対して、自分はどのカードを出そうかな。こんなに沢山あるカードの中から、贈るものはたった一つ。自分の選択を見せていくという感覚に近いですね。だから贈りものは気持ちの表現なんだと思うんです。相手との関係がある中で、物を介して対話を楽しむような。

贈りものをする、楽しみはどんなところにあるでしょう?

 プレゼントアイテムは相手のことを考えて選びますが、メッセージカードや包み紙など、ひと手間をかけられるところは、自分を表現できる部分かなと思っています。相手の手元に残るものは、相手のことを考えて。添えるものは私自身を表現して、という感じです。なぜ、この贈りものを選んだのか、理由や気持ちやテーマを書き綴り、添えて渡します。一番伝えたい真意をちゃんと伝えることが大切だなと思うんです。やりすぎてしまうと重くなるし、その頃合いと言葉選びも、私なりの感覚で表現していますね。

真野さんにとっての
贈りものとは

改めて、“贈りもの”とは真野さんにとって、どんな存在ですか?

 ものを介した気持ちのやり取りと同時に、私自身を表現するものでもありますね。贈りものは、十人十色、みんなの想いを託せる余白が“贈りもの”にはあると思うので、もの選びを楽しんで欲しいなと思います。

誰にとっても贈りものが、その人ならではのものになり得る、そんな気持ちにさせて頂くお話しでした。 ありがとうございました。
PROFILE
ギフトコンシェルジュ 真野知子

手土産など日常的なギフトからハレの日まで、多彩なシーンに合わせてギフトを選定。
“贈り、贈られることを楽しむ“ ということを大切にして欲しい。そんな思いからマナーよりも、贈り物選びのヒントを提案しています。テレビ、ラジオなどメディアへの出演、媒体での連載の他、商品企画&アドバイザー、選考委員、トークショーへの登壇など多方面で活動中。
連載:マガジンハウス「an・an」、The PROFESSIONAL WEDDINGほか
テレビ出演:「マツコの知らない世界」ほか多数
プライベートブランド:「ROOM SERVICE」
※トークショー、セミナーなどイベント関連への出演はTBSキャスティングに登録しています https://www.tbs-casting.com/speakers/102-mano-tomoko

Instagram

@tomoco_mano
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